危機管理のコストは年間売上高の2パーセント
金重先生
企業が危機管理を推し進めようとすれば、当然コストがかかります。つまり、安全コストです。ここで我々は、「安全と水はただではない」ということを再認識する必要があります。
しかし、どのくらいのコストが必要なのかは、政府も業界も基準を示してはいません。それは、自動車産業、食品業界、建設業界、公共交通機関、金融機関など個々の業種によっても異なるでしょう。また、企業規模、製品の製造目的などによっても異なるでしょう。しかし、あえて大胆に言えば、企業の年間売上高の2%程度は必要ではないかと思います。2%が多いか少ないかは、皆様方が議論される際のベースとしていただきたいと思います。それぞれに企業で計算してみて、現状との比較をされるといいのではないでしょうか。
いずれ、「安全とはどの範囲を言うのか、それによりコスト計算のやり方が異なる」
「そもそも危機管理の、危機の範囲をわが社でどう定めるべきか」などという議論も出てくるでしょう。
また、企業の収益性や製品・サービスの市場占有度、社会貢献性なども考慮に入れる必要が出てくるかもしれません。これこそ、まさに危機管理経営が実践に移されている証拠です。
いずれにせよ、”危機管理が強く意識される時代”、”安全・安心が強く求められる時代”が到来していることを忘れてはなりません。
片山
日本の企業の多くは、日本は安全な国であることを前提に企業活動を行っています。しかし、実際は、企業活動と企業を襲う危機は表裏一体であることを、きょう金重先生のお話をお聞きしていてあらためて実感いたしました。また、コンプライアンス違反などといった重要な問題に関しては、企業は万全の防御、対処ができたとしても、社員が起こす些細な不祥事についてはなかなか目が行き届かないものだと思います。しかし、そんな些細なことさえ企業にとっては、企業存続の生命線を脅かすことにもなりかねません。
金重先生の「危機管理は健康管理と同じ」というお言葉、大変深く受け止めました。日々健康への留意があって、初めて健康な肉体が約束されるものですよね。さらに、「憂いなければ備え無し」との名言。これらのお言葉を肝に銘じて、今後の企業活動に生かしていきたいと思います。企業はいかに危機を回避するかではなく、いかに危機に向き合うか。そのことをわかりやすく解説されている金重先生の著書を、もう一度じっくりと読ませていただきます。
本日は貴重なお話を賜り、誠にありがとうございました。